小規模企業共済のメリットと活用法

ヨクナル会計事務所の公認会計士・税理士の永田です。

今回は、小規模企業の経営者や個人事業主の皆様にとって、老後の資金準備として有効な「小規模企業共済」についてご紹介します。小規模企業共済は、経営者が安心して引退後の生活を迎えるための退職金制度として、非常に重要な役割を果たします。

このブログでは、小規模企業共済の基本的な概要から、そのメリット、注意点まで、詳しく解説していきます。最後までお読みいただき、ぜひ皆様の将来設計にお役立てください。

小規模企業共済とは?

国の機関である中小機構が運営する小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。掛金は全額を所得控除できるので、高い節税効果があります。

小規模企業経営者や個人事業主廃業時の生活安定や事業再建、社会保障の不備補充のために昭和40年に設立・開始され、2023/3月現在で約162万人の方が加入しています。

以下のYoutube(2023/9月)をご覧いただくと、概要の把握が可能です。

小規模企業共済のメリット

1.掛金の全額所得控除による節税

月々の掛金は1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能で、加入後も増額・減額できます。

確定申告の際は、掛金の全額を所得から控除できるため、高い節税効果があります。節税額は、掛金の金額や課税所得金額によって異なりますが、概ね以下の表の通りとなっています(共済金サポートnaviより)。


例えば、掛金月額7万円、課税所得金額が600万円の場合、1年間で255,600円の節税となります。
20年間では5,112,000円の節税となり、大きな節税効果が見込まれます。

より詳細なシミュレーションは、「小規模企業共済制度加入シミュレーション」から確認することができます。

2.共済金の受取りは一括・分割どちらも可能

共済金は、退職・廃業時に受け取り可能です。満期や満額はありません。
共済金の受け取り方・所得の扱いは以下の通りです。

受取方法所得
一括退職所得
分割公的年金等の雑所得
一括と分割の併用退職所得(一括)+公的年金等の雑所得(分割)

一括受取の場合、退職所得になります。退職所得は「(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額」と計算されます。よって、退職所得控除後の金額の半額が課税所得になるため、税金が少なくなります。
(国税庁:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得))

分割受取の場合、公的年金等の雑所得になります。公的年金等の雑所得は、国民年金や厚生年金等の年金受取に係る所得区分ですが、小規模企業共済を分割で受け取った場合も公的年金等の雑所得となります。年齢や収入に応じた控除があります。
(国税庁:No.1600 公的年金等の課税関係)

3.低金利の貸付制度の利用

掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で事業資金の貸付制度を利用できます。低金利で、即日貸付けも可能です(共済サポート navi 契約者貸付の概要)

貸付金には、以下の種類があります。
1.一般貸付:  簡易迅速に事業資金等の貸付けが受けられる
2.特別貸付: 特別な事情がある場合に限り認められる貸付け

金利は、貸付金の種類によって異なりますが、一般的には低金利といえる水準となっています。

加入資格と加入方法

加入資格

小規模企業共済制度には、以下の方が加入できます。
・ 個人事業の事業主とその共同経営者
・ 小規模企業を経営している会社等の役員

上記のほか、常時使用する従業員の数の制限(事業の種別に応じ5人~20人以下)などの条件があります。
具体的な加入資格については、「加入資格(共済サポート navi)」をご参照ください。

加入方法

加入手続きは、窓口又はオンラインにて手続きが可能です。私はオンラインで加入手続きをしましたが、簡単に手続できました(共済サポート navi 小規模企業共済に加入をご検討中の方へ)
窓   口: 商工会、商工会議所、都市銀行、信託銀行、地方銀行など
オンライン: マイナンバーカードが必要

共済金の受取

廃業時や役員退職時などに、掛金の支払額等を共済金等として受け取ることができます。
しかし、状況によっては元本割れとなる可能性がありますので、注意が必要です。

請求事由

共済金等とは、請求事由によって、「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約手当金」の4種類から構成されます。のことを言います(共済サポート navi 共済金等請求・解約)

共済金等の種類主な請求事由
(上段は個人事業主、下段は会社等役員)
共済金A・個人事業を廃業した場合
・会社等が解散した場合 など
共済金B・老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ方が対象)(会社役員等も含む)
・65歳以上で役員を退任した場合
準共済金・個人事業を法人成した結果、加入資格が無くなった場合
・法人の解散や疾病・負傷によらず、65歳未満で役員を退任した場合
解約手当金・任意解約(会社役員等も含む)

共済金(共済金A・B・準共済金)の受取額

掛金の納付月数に応じて、共済金等の種類ごとに、お受け取りになれる基本共済金(固定額)が規定されています(小規模企業共済法施行令(別表第一))(共済サポート navi 共済金等請求・解約)

  • 固定額の基本共済金(解約手当金含む)は、預けた掛金を原資とした一定の運用収入を見込んで決定されており、予定利率は1%となっています。
  • 運用収入状況に応じて、予定利率に加えて「付加共済金」が上乗せされることがあります。
    (2021年度0.328%、2024年度=0.673%など)
  • 掛金納付年数が長いほど受取額が大きくなります。
  • 途中で掛金月額を増額している場合の共済金の額は、増額前の掛金月額による掛金納付月数と、増額部分の掛金納付月数について、それぞれ計算を行い、それらを合計した額となります(途中減少の場合も同様)。
  • 請求事由が生じた場合でも、共済金A・Bは掛金納付月数が6か月未満の場合、準共済金は12か月未満の場合は、受け取ることができません。

解約手当金の受取

解約手当金の額は、掛金の納付月数に応じて、納付した掛金の80%から120%に相当する額です(小規模企業共済法施行令(別表第二))。
納付した掛金に対して100%以上の解約手当金を受け取れるのは、掛金納付月数が240か月(20年)以上からです。掛金納付月数が、240か月(20年)未満で任意解約をした場合は、元本割れとなり掛金合計額を下回ります。

  • 掛金納付月数が84か月(7年)未満の場合は80%、それ以降は掛金納付月数が長くなるごとに徐々に解約率が高くなり、240か月(20年)未満のときに100%となります。それ以降も徐々に解約率が高くなり480か月(40年)で110%の解約率となります。
  • 掛金納付月数が12ヶ月未満の場合は、解約手当金のお受け取りはできず、納付した掛金は掛け捨てとなります。
  • 解約手当金には、付加共済金の加算はありません。

まとめ

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や個人事業主にとって、将来の退職金準備として非常に有効な制度です。この制度を活用することで、税制上の優遇を受けつつ、将来の資金を確保することができます。

どの程度の節税が可能で、何年後にどれだけの共済金等を受け取ることができるのか、ぜひシミュレーションをして、自分にとって加入のメリットがあるのか、ぜひご検討ください。


今回のブログを通じて、小規模企業共済のメリットや活用方法についてご理解いただけたでしょうか?今後の事業計画や老後の安心のために、ぜひ小規模企業共済を活用してみてください。

関連リンク

小規模企業共済の公式サイト
小規模企業共済制度 加入者のしおり及び約款

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